『絞り優先』は、アマチュアからプロまで、多くの方が『いつものモード』として使っています。
そんなに難しくありませんので、皆さんの『いつものモード』にもオススメです!
『絞り優先』は、レンズの中にある『絞りの窓』の開く大きさを自分で自由に決められるモードです。
自分で『絞り』を設定したら、後はカメラが最適な『シャッター速度』を選んでくれます。
まずは『絞り』の変え方をチェックしましょう!
『絞りの窓』の大きさは『F値の大小』で変えます。
ダイヤルを回したり、ボタンの操作で『F値の大小』が変えられるようになっています。
カメラによって操作が多少違いますので、取扱説明書で『絞り優先』『F値の変え方』のページを確認してみましょう。
では、絞りの変え方が分かったらF値を動かしてみます。
F値を一番小さな数字にする。
F値を小さくすることを『絞りを開ける』と言います。
F値を小さくして『もうそれ以上小さくならない値』が『そのレンズの開放F値』です。
『開放F値』とは、そのレンズの『絞り』の窓が一番大きく開いた状態、光を一番多く通すことができる『明るい』状態です。
レンズによって異なりますが、いわゆる『明るいレンズ』の『解放F値』はF1.4、F1.8、F2.0などです。
それだけ多くの光を通過させることができますので、文字通り『明るいレンズ』というわけです。
ズームレンズの『開放F値』は、広角側と望遠側とで変わることもあります。
「このレンズ…開放がF3.5って書いてあるのに、F5.6より小さくならいんです…」
と聞かれることがありますが、広角側にズームを回せば、F3.5まで値が小さくなるはずです。
一般的にズームレンズの場合は、広角側の方が明るく、望遠側では少し暗くなるレンズが多いです。
グレードの高いズームレンズは、広角側も望遠側も明るさが変わらないものもあります。
ちょっと細かいですが頭の片隅に入れておいてくださいね。
F値を一番大きな数字にする。
F値を大きくすることを『絞りを絞る・閉める』と言います。
F値を大きくして『もうそれ以上大きくならない値』が『最小絞り』です。(値は最大ですが最小絞りです…)
窓が一番小さく開いている(絞りの窓は完全には閉まりません)状態で、通過する光の量が一番少なくなります。
画質が低下することもありますので、普段使いでF値を最大にすることはほとんどありません。
F値のイメージってなんとなく逆じゃないですか?(笑)
F値が小さいと窓が大きく開いて、F値が大きいと窓が小さくなる…
でもこれはそう覚えるしかないんです…『F値、逆!』と覚えるのがいいかもしれません。
絞りの窓の大きさを変えると何がどう変わるの?
絞りの変え方は指で覚えましたか?
では、次に『絞りの窓の大きさを変えると何が変わるのか?』をお話ししていきます。
『絞り優先で写真をボカす!』こんなフレーズを目や耳にすることが多いと思いますが…それは後ほど。
絞りの窓の大きさ(F値)を変えると…明るくなる・暗くなる
『絞りの窓』の大きさを変えると、通過する光の量が変わります。
遮光カーテンでイメージすると…
カーテンを全開にした時と、ちょっとしか開けない時では、部屋に入ってくる光の量は違いますよね?
当然、カーテン全開のほうが部屋は明るくなります。
『絞りの窓』も全く同じです。
絞りの窓を大きく開ける(F値を小さく)と、光がたくさん通過する。
絞りの窓を小さく開ける(F値を大きく)と、通過する光が少なくなる。
というようになります。
絞りの窓を通過した光は、次の『シャッターの窓』に向かって進んでいきます。
ここで、よく次のような質問があります…
「絞りを絞って光の量が減ったはずなのに、写真が暗くなりません!」
そうなんです。
『絞り優先』で絞りを変えても、写真の明るさは基本的に変わりません。
どうしてでしょうか?
『絞り優先』は『F値を自分で決めたら、最適なシャッター速度をカメラが決めてくれる』という仕組みです。
皆さんが『絞りの窓の大きさ=光の通過する量』を変えても、カメラは『カメラ自身が決めた適正露出(ちょうどいい写真の明るさ)』にするべく、シャッター速度を『速く・遅く』調整するので、写真の明るさは変わらないんです。
例えば…
『カメラが決めた適正露出(ちょうどいい写真の明るさ)』を『10』とします。
(『数字』はイメージです。写真の明るさを『10』などと表すことはありません。)
F値を指定して、絞りを通過する光の量を『8』にしたら、残り『2』の光の量をシャッターで賄えば『10(カメラが決めた適正露出)』の明るさになります。
絞りを通過する光の量を『4』に減らしたら、シャッターで賄う光の量が増えて『6』に…
絞りを通過する光の量を『1』に減らしたら、シャッターで賄う光の量がさらに増えて『9』に…
(『シャッターの窓』で光を多く賄うには『シャッター速度を遅く』する必要があります。)
カメラは『皆さんからの指示(露出補正)』がない限り『カメラ自身が決めた適正露出』に常に合わせようと、シャッター速度やISO感度を限界が来るまで調整して、光の合計を『10』にしようとします。
これがカメラの自動露出制御(AE)の機能です。
『絞り優先』で絞りを変えても写真の明るさが変わらないのは、この『自動露出制御(AE)の機能』が仕事をしているからです。
『絞り優先』は『絞り優先オート』や『絞り優先AE』とも言います。
「絞り優先なのにオートなの?」と思いませんか?
この『オート(AE)』とは『自動露出制御』のことです。
『自動露出制御』が働かないのは『マニュアル(露出)モード』のときだけです。
僕は講座で「『絞り優先』『シャッター速度優先』は『半分オート』ですよ」って言ってます。
でもこの『半分オート』が凄いんですね!
皆さんは『F値』を好きに決めるだけ!その他の『ややこしい露出の計算』は全部お任せ。
でも文句も言わず、ぴったり正確にやってくれるんです(笑)
皆さんはその分『撮ること』に集中できます…とてもありがたい機能です。
写真の明るさを変えるときは『露出補正』を使いますよね?
この『数字』のイメージを使って『露出補正』を説明するなら…
「私は、カメラが決めた『10』じゃなくて、明るめに『11』で撮りたいよ!とか、『9』で少し暗めに撮りたいよ!」と、カメラに指示するということです。
そうすれば『絞りの窓』と『シャッターの窓』を通過する光の量の合計を、ちゃんと『11』や『9』で処理してくれます。
めちゃくちゃお利口です(笑)
絞りを変えたときに、シャッター速度がどう変わるか見てみましょう
それではまず『開放F値』までF値を小さくして、カメラを何か被写体に向けます。
『シャッター速度』は1/何秒になっていますか?(シャッター速度が表示されない場合は、シャッターボタンを半押ししてすぐ離しましょう)
では、カメラの向きはそのままで、F値を大きくしていきます。
F値に連動して『シャッター速度』が動いているのが分かると思います。
F値を最大にした時、シャッター速度は1/何秒になりましたか?
部屋の中でしたら、おそらく1/60秒以下になっているかもしれませんし、もしかしたら1秒以下かも…
そのままシャッターを切ると『手ブレ(カメラブレ)の失敗』が待っています…
「そういえば…絞り優先で撮るとブレることが多かったかも…」と思った方いらっしゃいませんか?
『絞り優先』は難しくありませんが、これだけは注意しましょう!
『絞りの操作だけに集中してしまうと、シャッター速度が気づかないうちに、手ブレ(カメラブレ)するほど遅くなってしまうことがある』ということです。
特に日陰や室内でF値を大きくしたときは、シャッター速度もチェックしないと危険です。
ですので『絞り優先』を使うときは『F値はいつも小さめ』にしておく方が安心です。
ただ…F値を小さくしたせいで失敗することも。
F値を小さくしたら『写真が真っ白』になってしまった…
これは、ものすごい明るい場所で起こる失敗です。
レアなケースですが『写真が真っ白…絞り優先で起こる『露出オーバーの失敗』とは?』でご紹介しています。
「絞ったら手ブレ…開けたら真っ白…ちょっと面倒だな…」と思ったら…
『プログラムオート』を使えばOKです!
絞りの窓の大きさ(F値)を変えると、ボケの量が変わる
『絞りの窓』の大きさを変えると、ボケの量が変わります。
ボケを生かした写真を撮りたいときは『F値を小さく』します。(絞り窓を大きく開ける)
逆に、あまりボカしたくない時は『F値を大きく』します。(絞り窓を小さく閉める)
ここでボケについてお話していきます!
『被写界深度』を浅くすると、ボケが多くなる
例えば…
お花にしっかりピントを合わせて1枚撮ります。
しっかりピントを合わせた部分を『ピントの山(ピントが一番合っているところ)』といいます。
ただ、ピントの山以外は全部ボケるか?というと…そうではありません。
『ピントの山を挟んだ前と後(カメラ側と背景側)』にも、ピントが合っているように見える範囲があります。
この範囲が『 被写界深度(ピントが合って見える前後の範囲) 』です。
ですので、ボケは逆に『被写界深度の範囲の外(ピントの合っていないところ)』ということになります。
そしてこの『被写界深度』は、F値を変えることで『範囲を浅く(狭く)したり、深く(広く)したり』と変えることができます。
F値を小さくするほど『被写界深度』が『浅く(狭く)』なります。
ピントの合う前後の範囲が狭くなり、ボケが多くなります。
F値を大きくするほど『被写界深度』が『深く(広く)』なります。
ピントの合う前後の範囲が広くなり、ボケが少なくなります。
『被写界深度の浅い・深い』を図にしてみました。
皆さんは宙に浮いて、真上から撮影現場を見ているイメージです
赤のエリアが『被写界深度の範囲=ピントが合って見える範囲』です。
グレーのエリアは『ピントが合っていない範囲=ボケて見える範囲』です。
赤いエリアの広さが左右で違っています。これが『浅い』と『深い』の違いです。
左の図のように『被写界深度が浅い』方がボケが多くなります。(数えたら116個ボケがありました)
最初に『F値を小さくするほど、ボケの量が多くなります』とサラッと書きましたが、『F値を小さくするほど、被写界深度が浅くなるので、ボケの量が多くなります』がちゃんとした言い方です。
でも、ボカしたくないときに『F値を最大に!』というのはオススメしません。
上にも書きましたが、F値を大きくしすぎると画質が悪くなることもあるので、F値は大きくしても『F11~16位まで』で止めておきましょう。
『F値を大きくするほど、シャッター速度が遅くなる』のも注意でしたね!
F値を大きくして撮る時は、必ずシャッター速度もチェックしながら撮りましょう。
ボカしのコツは、絞りの操作だけではありません!
「絞りを開ければボケるって本に書いてあったけど、あんまりボケませんでした…」と言われることがあります。
そうなんです。
ボカしのテクニックは、実はF値を小さくするだけではないんです…
それよりも、レンズの使い方との組み合わせや、撮り方が大事なんです!
誰でも簡単に、しっかりボケを出すコツは『一眼カメラでキレイなボケをしっかり撮る4つのコツ』で詳しくご紹介しています。
『被写界深度』についてもしっかりお話ししていますので、要チェックです!
絞り優先は難しくない
どうでしょうか?半分オートの絞り優先。
『絞りすぎ=シャッター速度が遅くなる=手ブレ(カメラブレ)』というのをさえ注意すれば、なにも難しいことはありません!
カメラが裏でしっかり皆さんをフォローしてくれています。
『いちばんはじめ』の絞り優先は…
◎ 普段使いのときは『F値は小さめに』
◎ ボケの量を多くしたかったら『F値を小さく』
◎ 少し奥までピントを合わせたかったら『F値を大きく』
こんなイメージでOKです!