「シャッター速度優先で撮ると写真が暗くなるのはどうして?」
このように聞かれることが本当に多いです。
写真が暗く写る原因は様々ですが…
ただ、「シャッター速度優先で撮ったとき…」と言われたら…
それはほぼ100%、シャッター速度が速すぎた(ただ速くしただけ)からです。
速いシャッター速度で撮ること自体は、撮る場所が明るければそんなに難しくありません。
でも!「暗い場所で」となると一気に難易度が上がります。
皆さんの腕とカメラとレンズの性能が試される過酷な状況です。(笑)
今回のお話は、暗い場所で速いシャッター速度で撮るにはどうしたらいいか?
難しいシーンなので、初心者さんにも分りやすいようにじっくりご紹介していきます。
動いている被写体を止めて撮る設定は?
まず最初に「動いている被写体をピタッと止めて撮る設定」を確認しておきましょう。
撮影モードは「シャッター速度優先」に。
そして、シャッター速度は「1/500秒以上」に。
そして「撮影設定」は、以下のように設定するのが基本です。
写真の明るさは、いつも通り『露出補正』でしっかり微調整しましょう。
設定自体はそんなに難しくないハズです。
暗い場所では、シャッター速度を速くするだけではダメなんです
シャッター速度優先は、みなさんがシャッター速度を自由に決めるモードです。
絞りとISO感度は、カメラがその場所の明るさに合わせてコントロールしてくれます。
ただ、カメラにも限界があります。
絞りは開放まで開いた → もう明るくできない。
ISO感度は最高まで上げた → もう明るくできない。
「シャッター速度優先」で真っ暗ということは、カメラがコントロールできる絞りとISO感度の限界を超えたからなのです。
あとは、その場所の「暗さ」がそのまま写真に記録されるワケです。
カメラの限界を引き上げる
カメラは既にいっぱいいっぱいの状態ですが…
みなさんが少し手助けすることで、カメラの限界をもう少し引き上げることができます。
ISO感度をさらに上げる。
最初の手は「ISO感度をさらに上げる」ということです。
「ISO感度はオートでしょ?」と思われるかもしれませんが…
実は、ISOオートは、カタログスペック上の限界までは上げてくれない場合が多いんです。
ISO感度は上れば上がるほど画質が悪くなっていきます。
スペック上の最高感度まで上げると、もうそれは相当です…
「ISOオート」のデフォルト設定では、メーカーが決めた「画質が許されるギリギリの感度まで」しか上がりません。
ISOを無理矢理上げるより、メーカーとしては、シャッター速度を遅くしてキレイな画質で撮って欲しいワケです。
ただ、今回の撮影でシャッター速度は譲れないので、ISO感度を超高感度に設定する必要があるのです。
画質を捨てるか?
明るさを捨てるか?の厳しい選択です。
「ISO感度はどこまで上げればいいの?」
ISO感度をどこまで上げるか?
それはカメラの露出表示を見ながら判断すれば簡単です。
シャッター速度優先で暗く写ってしまうとき、カメラは「F値を点滅」させて教えてくれます。
ISO感度は、カメラを被写体に向けたまま「F値の点滅」が止まるところまで上げましょう。
もっとも簡単なのは…「ISO感度オートの上限値」を上げちゃう!
「ISO感度をどこまで上げるか?」は上記の通りです。
ただ、暗い体育館でも「どこも同じ明るさ」ではありません。
天井のライトの真下は周りより少し明るいでしょうし、ライトから遠いいところはやっぱり暗いはずです。
ISO超高感度の画質の荒れを少しでも軽減したければ、その場所場所の明るさに応じて、少しでも感度を下げて撮りたいところです。
ただ、撮るのに精一杯な状況の中で、ライトからの距離に応じてISO感度を上げ下げするのは、慣れている人でもなかなか難しいところです。
でも、今のカメラは優秀です!
「ISO感度オートの上限値を上げる」という設定をすることで、ココをカメラに任せてしまうことができます。
元々、ISO感度オートの上限は、メーカーが画質的におすすめできる、1600や3200くらい(抑えめ)に設定されています。
この上限値をカメラの持っている最高感度(25600など)に変更してしまいます。
設定は取扱説明書でご確認ください
「暗い場所で速いシャッター速度が必要」な撮影の際は、最初にこの設定をしてしまえば、後は「ISOオートのまま」、皆さんは撮ることに集中できます!(後はピント合わせですね…)
超高感度を使いながらも、ライトの真下などで少し明るいところなら、1段でも2/3段でもISO感度を下げてくれます。
本当に便利な機能なので、このようなシーンに挑むときはぜひ思い出してくださいね!
注:「暗い場所で速いシャッター速度が必要なシーン」が撮り終わったら、必ず「ISOオートの上限値」を元に戻しておきましょう!
「便利だからこのままでいいや!」と上限値を最高感度(25600など)にしたままにすると、今度、夜景を撮ったりするときでも、カメラがISO感度をまたMAX(25600など)まで上げてくれます…
ご注意ください。
他の手は?
シャッター速度優先で写真が暗く写ったら、まずはISO感度を。
そして、次に…と言いたいところですが…
無いんです。(笑)
写真は光がないと撮れません。
少なくても光があれば、シャッター速度を遅くすればいくらでも撮れます。
ただ、「速いシャッター速度で!」となると、本当に撮れません(=真っ暗)。
「いや、それでも何とか…」と言われれば…
明るいレンズに交換する。
もし明るいレンズをお持ちなら、まず最初に交換しておきましょう。
明るいレンズとは、開放F値がF2.8などと小さいレンズです。
動きモノのシーンは望遠レンズで撮ることが多いので、「明るい望遠レンズ」が必要になります。
ただ、この「明るい望遠レンズ」は、各メーカーでも高級ラインナップのレンズです。
お値段も、重さも相当な覚悟が必要です。(笑)
希望を壊すようですが、「明るいレンズに変えたらISO100で撮れる」というワケではありません。
今持っているレンズが開放F5.6、買おうと思っている「明るいレンズ」が開放F2.8とすれば…
「2段明るいレンズ」ということになります。
例えば、今持っているレンズで「ISO12800」でギリギリ撮れたとすれば…
明るいレンズを使えば「ISO3200」で撮れるということです。
または、もし同じ「ISO3200」で撮るなら、今持っているレンズは1/500秒で、明るいレンズなら1/2000秒で撮れるということです。
これでも凄くありがたいことですが、一気に限界が広がって、どんなところでも、どんな状況でも撮れるというわけではありません。
シャッター速度を妥協する。
他の手があるとすれば、シャッター速度を妥協するということです。
例えば、「1/125秒」 くらいまで遅くして…
動きが遅くなるタイミングを狙うとか…
動きが止まる瞬間を狙うとか…
流し撮りに切り替えるか…
難しいですが、撮り方をなんとか工夫するしかありません。(笑)
これ以上は本当に無理…
明るいレンズで、ISO感度をカタログ上の最高感度まで上げて、1/125秒くらいまで妥協して…
それでも「F値が点滅する、暗く写る」というときは、その場所は暗すぎて「動いている被写体をピタッと止めて撮る」のは本当に無理ということです。
実際にテストしてみましょう!
今回ご紹介した一連の流れを実際にやってみましょう。
外の光が入る明るい部屋なら、カーテンを閉めて薄暗い環境を作ります。
そして、撮影モードを「シャッター速度優先」に。
シャッター速度を「1/500秒」に。
ISO感度を「ISOオート」に。
まずはこの状態で室の中をパチッと撮ってみます。
写真の明るさはどうですか?
暗め、もしくは真っ暗じゃないですか?
これが「シャッター速度をただ速くしただけの写り」です。
でも、目で見た部屋は今の写真ほど暗くありませんよね?
この感覚の差がシャッター速度優先の難しいところかもしれません。
ではもう一度、「1/500秒」のままカメラを見てみましょう。
F値が点滅していませんか?
(表示が消えている方は、シャッターボタンを軽く押してすぐ離すと戻ります)
この点滅が「このまま撮ったら暗く写るよ!」というカメラのサインです。
シャッター速度優先で撮るときは、F値が点滅していないか?
常にチェックしながら撮ることがとても大事なんです。
(カメラによって、表示が異なる場合もあります)
暗い写真を「明るくするだけ」なら簡単
今、ワザと暗く失敗した写真の明るさを直したいと思います。
「なぜ暗く写ったか」もう皆さんお分かりですよね?
その場所の明るさに対して、シャッター速度が速すぎたからです。
ではここで、「F値の点滅」が止まるまで「シャッター速度を遅くして」いきましょう。
そして、点滅が止まったところでもう1枚撮ってみます。
どうでしょうか?
今度はちょうどいい明るさで写ったハズです。
動きモノを撮るのでなければ、無理にISO感度を上げずに、先に「シャッター速度を遅くする」ことを優先しましょう。
その方が画質が良いですよね!
ただ、手ブレに注意です。
では、動きモノを撮るときバージョン、「ISO感度を上げていく」方もやってみましょう。
ISO感度をググッと上げて明るくする!
まず、遅くしたシャッター速度を1/500秒まで戻します。
次に「F値の点滅」が止まるまで「ISO感度を上げて」いきます。
そして、点滅が止まったところでまたもう1枚撮ってみましょう。
今度は「速いシャッター速度のまま」、明るさも大丈夫だったハズです。
もし、点滅が止まらず、写りも暗かったら…
その場所の明るさは、1/500秒では撮れないということです。
ミラーレスなら撮る前も暗い!
ミラーレスのファインダーやモニターには「写る明るさ」が映ります。
シャッター速度を速くしすぎて、写真が暗く写るなら、撮る前のモニターに映る像も同じように暗いハズです。
こんな分りやすいサインはありませんよね?
モニターの像が暗かったら…
「壊れた?」と疑う前に「露出がアンダーなこと」を疑いましょう。
一眼レフをお使いの方でも、「ライブビュー撮影」に切り替えれば同じです。
難しいけど…撮れたら嬉しい!
今度「暗い場所+速いシャッター速度」のシーンに遭遇したときは大丈夫そうですか?(笑)
ここはもう練習あるのみです。
難しい撮影だけあって、上手く撮れた時の嬉しさはプライスレスですよ!
今回は設定をいろいろ変えています。
変えたところは覚えているうちに「普段使いのオススメ設定」に戻しましょう。
特にISO感度は「オート」に戻しておいてくださいね。
最後までご覧いただきありがとうございます。
お疲れ様でした!