「一眼レフの望遠レンズと同じ写真を撮るには、何倍のカメラを買ったらいいですか?」
「友達の30倍のカメラと同じ望遠レンズが欲しいんですけど」
このように聞かれることがありますが、これだけだと答えるのはムリです…
「こちらのカメラ、40倍だからものすごくキレイに撮れますよ!」
テレビのカメラ通販番組が好きで見ていると、たまにこんな不思議なトークを聞くこともありますが…
今回は、カメラの話でよく出てくるカメラのズームの ◯◯倍についてです。
何倍とはズームレンズの倍率のこと
レンズの話で出てくる「倍率」は、撮影倍率とズーム倍率と2つありますが、今回はズーム倍率のお話です。
撮影倍率は、被写体の実際の大きさと、センサー上に写る大きさの比率で、接写性能を比較するときによく使われます。
5cmの長さの被写体が、センサー上に1cmで写るなら、撮影倍率は1/5倍(1:5)となります。
また、5cmの長さの被写体が、センサー上に5cmで写るなら、撮影倍率は1倍となり(等倍)、大きく撮れるレンズ(マクロレンズなど)と呼ばれます。
ちなみに…
レンズには「焦点距離」が書いてあります。
ズームレンズの場合、◯◯ − ◯◯mmというように、2つ数字が − で繋がっていて、「〇〇mm から 〇〇mmまで撮れますよ」ということを表しています。
そして、そのレンズのズーム倍率は、望遠端 ÷ 広角端で計算できます。
上のレンズの場合ですと、
55÷18
= 約3倍のズーム倍率
250÷55
= 約4.5倍のズーム倍率
と、なります。
ちなみに、単焦点レンズは(当然ながら)ズームできませんが、敢えて計算するなら…
45÷45 = 1倍(ズームできない)となります。
一眼カメラの交換レンズで、ズーム倍率が大きいもの(高倍率ズームレンズ)は、各社とも10倍前後のものが一般的ですが、中には15倍や20倍くらいと、個性の尖ったレンズもあります。
レンズ交換なしで、会場全体も広く撮りつつ、走る息子のアップも撮れる、まさに運動会で大活躍のレンズです。
「砂埃が舞う中レンズを交換して、センサーが汚れた」なんてことも起こりません。
「フルサイズのレンズだったら〇〇mm」に合わせないと比較しにくい
ちなみにNIKONの「COOLPIX P950」というカメラのズーム倍率は…なんと83倍!です。
ただ、83と数字だけ聞いても「うゎすごい!」となりますが、どう凄いか?は、いまいちぼんやりしてしまいます。
それは、カメラのセンサーの大きさがバラバラだからです。
レンズ同士のズーム倍率を比較するときは、それぞれの焦点距離を、「フルサイズ(35mmフィルム)のセンサーサイズだったら」に合わせて比べると良く分かります。
焦点距離 「標準?」「35mmフィルム換算?」| レンズの使い方
上でご紹介した↓このズームレンズの焦点距離は「18−55mm」でした。
このカメラはキヤノンのAPS-Cなので、フルサイズ(35mmフィルム)に換算するためには、「18−55mm」に1.6を掛ける必要があります。
すると、フルサイズだったら「約29−88mm相当」のレンズだということが分かります。
一方、「Nikon COOLPIX P950」の焦点距離は、Nikonのサイトに「4.3−357mm」と書いてあります。
これを、やはり同じくフルサイズ(35mmフィルム)の焦点距離に換算すると、「24-2000mm相当」のズームレンズということになります。(仕様表にも書いてくれています)
つまり、
29−88mm
vs
24-2000mm
となるわけです。
レンズ2本で臨んだとしても…
2本合わせて
29−400mm
vs
24-2000mm
こうして数字を揃えて比較すれば、「うゎ、何これ化け物か?!」としっかり驚けます。
広角側はより広く撮れて、望遠側は比較になりません…(そもそも、一眼カメラの交換レンズで「2000mm」なんてありません)
広い風景を撮った後、そのまま、カメラもレンズも変えずに、画面いっぱいに月を写せる異次元さです。
一眼のズームレンズ3本分(でも全然足りない)の範囲が、この小さいカメラ1台だけで撮れる、しかも持ち歩く機材の重さも比較になりません。
最初の質問に戻りますと…
「友達の30倍のカメラと同じ望遠レンズを探しています!」というときは…
まずは、その友達のカメラの「望遠側の焦点距離」を聞き出して調べれば話が進みます。
「一眼の望遠レンズと同じくらいの写真が撮れるのは、何倍のカメラですか?」というときも…
やはり「焦点距離」を絡めて調べれば、答えが見つかるはずです。
そして、焦点距離はフルサイズのレンズだったらの数字に合わせて比較することをお忘れなく。
焦点距離 「標準?」「35mmフィルム換算?」| レンズの使い方
高倍率ズームは、コンパクトカメラならではの面白さ!
30倍、40倍、83倍というズーム倍率は、コンパクトカメラの得意とするところです。
◎ 24-720mm → 30倍
◎ 24-2000mm → 83倍
カメラにとってレンズはとても重要な部分なので、なかなか小さくできませんが、センサーを小さくすることでレンズも小さくできます。
小さいセンサーは、画質や高感度ノイズ、ボケの量などの面で、不利なことも少なくありませんが、レンズを含めたトータルのコンパクトさ、持ち出しの気軽さは、高倍率ズームコンデジならではのメリットです。
最近のコンパクトカメラは、そのセンサーの小ささを逆に生かしたオールマイティで面白いお化けカメラがどんどん出てきています。
さらに、絞り優先などの「応用撮影モード」の搭載や、大事な「撮影設定」もしっかり弄れたり、「RAW」でも撮れたりと、いわゆるレンズ交換式の一眼カメラと同じような撮影ができる機種も増えています。
「すごいキレイな夕日だけど、今日は重たいからカメラ持ってこなかった…」
「今日は望遠レンズは持ってこなかった…」
なんて悔しいことも少なからずあると思いますが、いつでもカバンに入れておけるコンパクトデジタルカメラなら、お散歩の友にぴったりで、シャッターチャンスも逃しません!
ただ、確かに83倍は凄いですが…
僕は、広角24mm(フルサイズ換算)から10倍ズームくらいで、写りの良いコンデジが普段使いにオススメです!
最後までご覧いただき、ありがとうございました。