富士フィルムの名カメラ、「写ルンです」はご存知ですか?
「いつでも、どこでも、誰にでも簡単にきれいな写真が撮れる」
そんな素晴らしいコンセプトで1986年に登場した、大人気の「使い捨てフィルムカメラ」です。
「誰にでも簡単にきれいな写真」というのは、このサイトの目指すところと全く同じです。(笑)
今回は、そんな「写ルンです」がどんなカメラなのか?というお話と…
自分のデジタルカメラを「写ルンです仕様」に変身させて撮ってみよう!というお話です。
「写ルンです」は最強のスナップカメラです
「写ルンです」はまだまだ現役です。
お店でも売ってますし、観光地に行くと使っている人をたまに見かけます。
ちなみに、Amazonで見てみると、27枚撮りの「写ルンです」が900円位でした。
ただ、カメラ屋さんにフィルムを出せば、現像代が700円位、それにプリント代が1枚40円位かかります。
ということは、ワンシャッターが約100円(!)という計算になります。
今はデジカメで、1日に500枚、1,000枚も撮る方も少なくありません。
1枚100円と考えれば、いかにデジカメがコストパフォーマンスがいいか分かりますよね!
もちろん、全コマプリントするワケではありませんが…
デジカメ全盛の今では、フィルムで撮るのは贅沢な趣味になってしまいました。
ちなみに、僕も昔、「写ルンです」にハマった一人です。
「写ルンです」の凄いところは何と言っても…
◎ 絞り合わせが不要!
◎ シャッター速度合わせが不要!
◎ ピント合わせも不要!
ただ「撮りたい!」と思ったときに、シャッターを切るだけのシンプルさです。
まさに最強のスナップカメラですよね?
面倒くさがり屋な僕にとっては、まさに理想のカメラでした。
ただ、欲をいうと、フィルムの巻き上げが面倒でした(笑)
どうして全部不要なの?
「どうして?シャッターボタンを押すだけでキレイに撮れるの?」
と思うかもしれません。
でも、それは「写ルンです」の中で、すごい処理をしているワケではありません。
ただシンプルに「写真的な特性」を上手く組み合わせて作られたカメラだからなんです。
絞り・シャッター速度・ISO感度を合わせる必要がない理由
「写ルンです」は被写体の明るさに関係なく、全て「同じ露出(写真の明るさ)」で写真を撮っていきます。
例えば「写ルンです シンプルエース」の場合…
絞り:F10
シャッター速度:1/140秒
ISO感度:400
常にこの露出でフィルムに記録していきます。
デジタルカメラでこんな撮り方すれば、オーバー(明るすぎ)とアンダー(暗すぎ)の連続で、まともな明るさに写りません。
それでも「写ルンです」だと大丈夫なのは「ネガフィルム」のおかげです。
ネガフィルムは、記録できる「明るさ幅」が広いのが特徴です。
オーバーに、アンダーに、明るさを外して撮ってしまっても、現像やプリントの際に「ちょうど良い明るさ」に戻す(近づける)ことができるんです。
明るさなんか全く気にせず撮って、フィルムを現像に出します。
そして、後日受け取る写真は、写真屋さんが1枚1枚「ちょうど良い明るさ」に調整してくれた写真です。
難しい操作をしないでも、誰でも簡単にキレイに撮れたのはそんな理由だからです。
ただ、デジタルカメラはそうはいきません!
デジタルカメラは記録できる「明るさの幅」が、ネガフィルムと比べて狭くシビアです。
大きく外した「明るさ」を後で戻そうとしてもキレイに戻せません。
また「ちょうど良い明るさ」に調整してくれる人もいません。(笑)
写真の明るさは「露出補正」で1枚1枚、「自分」でしっかり合わせて撮る。
デジタルカメラではココがとても大事です。
ちょっと話が外れました…
ピントを合わせる必要がない理由
「写ルンです」はピント合わせの必要もありません。
でも、写った写真のピントは合っています。
不思議ですよね?
実は「写ルンです」は、もともと「全てにピントが合う」ように作ってあるんです。
例えば、「写ルンです シンプルエース」の場合、ピントの合う範囲は手前側は「カメラから1m先」、後ろ側は「無限遠まで」となっています。
つまり、「自分の1m先からその後ろ全て」にピントが合ったように写るんです。
あとは「被写体に近づきすぎない(1m)」ことだけ気を付ければ、ピントのことは一切考えなくてイイんです。
これを「パンフォーカス撮影」と言い、ピント合わせが要らない理由です。
ちょっとレンズのお話ですが…
「ピントが合っているように見える前後の範囲」のことを「被写界深度」と言います。
「写ルンです」は、この「被写界深度」をグッと深くして、常に「パンフォーカス」で撮れるようにしてあるカメラです。
「被写界深度」を深くするための条件は…
① 絞りを絞る
② 焦点距離の短い(広角)レンズを使う
③ 被写体から離れる
の3つです。
「写ルンです」は絞りがF10、焦点距離が32mm(35mmフィルム換算値)です。
ちゃんと「被写界深度」が深くなるように作られています。
「被写界深度」について、詳しくは「絞り優先:A (Av) モード」でご紹介しています。
皆さんのカメラも「写ルンです仕様」に変身!
「写ルンです」で撮ってみたくなりましたか?
でも、いきなり買うのはちょっと勇気がいります(笑)
でも、既に皆さんは良い(デジタル)カメラをお持ちですから、まずは試しに、自分のデジタルカメラを「写ルンです仕様」に変身させて遊んでみましょう!
撮影モードは「マニュアル(露出)モード」を使います。
※ 今回は「マニュアルモード」+「ISOオート」を使います。
もし、「ISOオート」が使えないカメラをお持ちでしたらスミマセン…
詳しくは後ほど。
シャッター速度を ”1/500秒” に!
歩きながらでもパチリ。
そんな撮り方でもブレないように、速いシャッター速度に設定します。
はじめは、”1/500”秒くらいにセットしましょう。
相手が動いていても…
こっちが動いていても…
片手で撮っても…
追いかけながらでも…
シャッターチャンスのアンテナをピンっと張って、偶然の瞬間も狙っていきましょう。
外が明るければ、”1/1000” でも ”1/2000” でも、速ければ速いほど楽しいですよ!
これだけでも、すでに「写ルンです」よりシャッターチャンスに強いカメラになっています。
絞りは絞り気味に!
「パンフォーカス」で撮る条件は「絞りを絞る」です。
ただ、セットする「F値」はセンサーの大きさによって少々変わります。
フルサイズやAPS-Cのカメラをお使いなら「F16〜F22」に。
フォーサーズサイズ以下のカメラをお使いなら「F8〜F11」に。
それぞれセットしましょう。
レンズは広角で
「パンフォーカス」で撮る条件は「焦点距離の短いレンズ」です。
今回は、「28〜35mm位(35mmフィルム換算値)」の広角レンズを使いましょう。
「焦点距離の35mm換算」は大丈夫ですか?
街撮りスナップは「34mm(35mmフィルム換算値)」位がいちばん撮りやすと思います。
さらにこだわるなら「写ルンです」と同じ「32mm(35mmフィルム換算値)」で撮るのも面白いかもしれません。
標準ズームレンズがあれば万能です。
マニュアルフォーカス(MF)でピントを固定!
次はピントです。
やはり「写ルンです」と同じように、マニュアルフォーカスを使います。
そして、自分から「3m」くらい先の何かを探して、そこにピントを合わせましょう。
また、次のように、先にAFで「3m先」に合わせて、そのままMFにするのもOKです。
① オートフォーカス(AF)で「3m位先の何か」にピントを合わせる。
② ピントが合ったら、そのままマニュアルフォーカス(MF)に切り替える。
これで、「自分の1m位先から、後ろは無限まで」ピントが合った状態が続きます。
撮影中はピントリングを動かさないように注意してくださいね!
一部のカメラでは、電源を切ったり、スリープ状態になったときに、ピント位置がリセットされることがあります。
そんなときは再度「3m先」に合わせ直しましょう。
ミラーレスをお使いなら、フォーカスピーキングを使えばマニュアルフォーカスも簡単です。
「ISO感度」はオートに!
「え?マニュアルモードでISOオート?」
と思う方もいるかもしれませんが…
最近のカメラでは、マニュアルモードでも「ISOオート」が使える機種が増えています。
さらに、「露出補正」や「AEロック」までできる機種もあります。
デジタルカメラは「写真の撮り方」も新しくしています。
さて、設定のお話に戻ります。
上記で、シャッター速度、絞りを固定してきました。
さらに「ISO感度」まで固定してしまうと、アンダー、オーバーの連続になります。
そこで、「ISO感度」は便利な「ISOオート」にセットします。
これで、1コマ1コマ、写る明るさは「ISOオート」が調整してくれます。
ISOオートの上限を上げておく!
「写る明るさ」はカメラがISO感度をコントロールして調整してくれます。
ただ、日中の街撮りスナップとは言え、F値もシャッター速度も「暗め」にセットしています。
また、日陰に入ったり、室内に入ることもあるハズです。
撮り始めたらもう設定のことは考えたくはありませんよね?
そこで、「ISOオート」の上限を「ISO12800~25600位」まで上げて、明るさの調整幅を広げておきます。
デジタルカメラはいろんなワガママを聞いてくれます。
画質は多少悪くなりますが…
たまにはそれを「味」と言ってしまう写真も面白いと思います。
上限を上げたからと言っても、常に「ISO12800〜25600」で撮るということではありません。
「必要ならそこまで上げていいよ」とカメラに指示したということです。
必要がなければ、カメラは低い感度で撮ってくれます。
超高感度の画質を「モノクロ」でカバー!
高いISO感度のザラザラ感を「モノクロ」でごまかしてしまいます。
ごまかすと言っても、これはこれでなかなかイイ味が出ます。
街撮りスナップ+モノクロは、ズルいと言われるくらい鉄板です。
また、最近良くある「アートフィルター」や「ピクチャーエフェクト」などの効果を使って撮るのも面白いですよ。
自分だけの「スナップ鉄板フィルター」を探しましょう。
設定が難しかったら… すぐ電話サポートに聞きましょう!
ズラズラッと設定を並べて書いてしまいましたが…
「ん?ちょっと難しいなぁ…」と思ったら、メーカーのサポートに電話で聞いてしまいましょう。
「ISOオートの上限設定」などは、いつも使うところではないですもんね。
写真の反射神経を鍛える!
さて、皆さんのカメラは無事に「写ルンです仕様」になりましたか?
あとは、自分の撮りたい気持ちに任せてシャッターを切るだけです!
デジカメですから枚数も気にしません。
フィルム巻き上げの手間もありません。
パチパチどんどん撮りましょう。
また、ピント合わせが要らないので「ノーファインダー」で撮るのもオススメです。
頭で考える構図とは一味違う、斬新な1枚が撮れるかもしれませんよ。
「写ルンです仕様」には限界があります。
路地裏やお店の中、夕方など、薄暗いところで撮ると写真が暗くなるかもしれません。
これは「ISO感度」が設定した上限まで上がりきってしまっています。
そんな場合は、シャッター速度を「1/60秒」まで遅くして、しっかり構えながら撮りましょう。
それでも暗く写るようなら、もう「写ルンです」の撮影を止めるタイミングということです。
普段通りに撮りましょう。
今回は設定を色々と変えています。
撮影が終わったら忘れずに元に戻しておきましょう!
お疲れ様でした!